いい塩梅 良い塩加減の為に、手塩皿を
自ら世話をして大切に育てることを「手塩にかけて育てる」といいます。この「手塩」というのは小さな皿に盛って食卓に置いた塩のこと。食事をともにする家族であっても、その日の体調はそれぞれ違います。自分の体調にあった塩加減に調味するようにと置かれたのが手塩というわけです。塩はとても貴重だったので、この手塩はその家の長が一人ひとりに配っていました。でも、小さな子供は一人前になっていないということで、手塩は割り当てられなかったんです。とはいえ、人間にとって塩は必要不可欠なもの。そこで、父親や母親が自分の手塩を、小さな子供にちょうどよい分だけ分けてあげた。そこから、「手塩にかけて育てる」という言葉がうまれたんですね。
いつからか「手塩」は使われなくなり、食卓を囲んだ人は、同じ料理を食べるようになったけど、必要とする塩気は人それぞれ違います。
たくさん運動をして汗をかいた子供は、家事をしていたお母さんよりは、塩気をほしがるはず。お風呂上がりも汗をかいているから、通常よりも塩気がほしくなりますね。
このように、一つ屋根の下に暮らす家族といえども、そのときどきにそれぞれが必要とする塩気は違うものです。私は、そのときのその人の状態に適した塩気を「適塩」と呼んでいます。1日に10グラム以上摂ってはいけないから、などと言って塩分を控えてしまったら、重労働をしている人は腑抜けになって、次の日の仕事に力が入りません。 味噌汁でもお吸い物でも口に含んだときに「ああ、ちょっと濃いな」と思ったら、お湯をさして薄めればいいし、「ちょっと薄いな」と思ったら、塩やしょう油を足して自分がおいしいと思う濃さにすればいいんです。
塩は健康の敵のように思われているけど、必要もないのに減塩をしたら、
かえって病気をしてしまいます。闇雲に「減塩」するのではなく、自分のからだの状態を考え、自分のからだが本当に必要としている塩分をそのときどきにきちんと摂る「適塩」を心がけてほしいと思います。